パートナー代表の高橋俊哉です。7月に入っています。梅雨明けも今月中旬ぐらいと告げられています。そのあとに来る猛暑、酷暑に備えておきましょう。梅雨の時期の雨は、少し気分が沈み込むこともありますが、木々や草花にとってはまさに恵みの季節でもあります。 同じ雨でも、その人その人によって感じ方は違います。今日は、そんな「世界の見え方」について、一冊の本を手がかりに考えてみたいと思います。 季節も移っていきます。皆さま、どうぞ体調にはくれごれもお気をつけてお過ごしくださいね。

さて今日は、少し変わった一冊をご紹介したいと思います。アメリカの人類学者カルロス・カスタネダが著した『イクストランへの旅』という本です。半世紀以上前に出版され、世界中で読み継がれてきた名著ですが、一方で非常に不思議な本でもあります。現実なのか寓話なのか、哲学なのか神秘思想なのか、その境界は曖昧です。しかし私は、この本を「人生を柔らかくするための哲学書」として読むと、多くの示唆を受けられるように思います。

最近は「自分らしく生きよう」という言葉をよく耳にします。しかし、この本は少し違う問いを投げかけます。

「その『自分』とは、本当に確かなものなのだろうか。」

私たちは普段、自分という存在を、とても確かなものだと思っています。私はこういう性格だ。私はこういう人生を歩んできた。私はこういう人間だ。もちろん、それらは間違いではありません。しかし、それは過去の経験や記憶、周囲から与えられた評価を積み重ねて作られた「物語」でもあります。

婚活でも同じことが起こります。「自分はもう年齢的に遅い」「どうせまた断られる」「自分には魅力がない」「こういう相手しか合わない」。こうした思い込みは、いつの間にか「事実」のようになってしまいます。しかし、本当にそうなのでしょうか。

『イクストランへの旅』は、その「当たり前」を一度疑ってみることから始まります。

本書の中で私が特に印象的だった教えの一つが、履歴を消す」という考え方です。

履歴とは、単なる職歴や経歴ではありません。「私はこういう人間です」と説明し続けている、自分自身の物語のことです。

私たちは初対面でも、「私はこんな仕事をしています」「こういう性格です」と、自分を説明します。しかしその説明を繰り返すほど、自分自身もその物語に縛られてしまいます。

もちろん過去は大切です。しかし、過去だけで未来を決める必要はありません。

婚活でも、「昔うまくいかなかったから」「離婚を経験したから」「恋愛経験が少ないから」と、自分で可能性を狭めてしまう方が少なくありません。

しかし、人は過去そのものではありません。

今日どのように生きるかによって、新しい自分を育てることができます。

二つ目は、「自尊心をなくす」という教えです。

これは、自分を粗末にしなさい、という意味ではありません。

ここでいう自尊心とは、「自分を必要以上に重要視する心」です。

私たちは、人からどう思われるかをとても気にします。

断られたらどうしよう。

失敗したら恥ずかしい。

変に思われたくない。

もちろん、その気持ちは自然です。

しかし、その「自分」が大きくなりすぎると、行動できなくなります。

婚活でも、「嫌われたくない」という思いが強すぎると、本当の自分を見せられなくなります。

反対に、「相手を理解したい」という気持ちが前に出てくると、不思議と会話は自然になります。

自尊心を少し脇に置くことで、人は自由になれるのです。

三つ目は、「死をアドバイザーにする」という考え方です。

少し驚く表現ですが、とても深い教えです。

私たちは、明日も当然やってくると思っています。

だから、「また今度」「そのうち」「もう少ししてから」と先送りしてしまいます。

しかし、本当にそうでしょうか。

人生には限りがあります。

だからこそ、今日という一日がかけがえのないものになります。

婚活でも、「もう少し痩せてから」「仕事が落ち着いてから」「来年になったら」と考えているうちに、時間は静かに過ぎていきます。

死を恐れるためではありません。

限りある時間を意識することで、「今」という時間が輝き始めるのです。

そして四つ目が、本書の中でも最も印象的だった「世界を止める」という教えです。

私たちは毎日、同じ見方で世界を見ています。

この人はこういう人。

仕事とはこういうもの。

結婚とはこうあるべき。

人生とはこういうもの。

しかし、その多くは、本当にそうなのでしょうか。

私たちは世界を見ているようで、実は「自分の思い込み」を見ていることが少なくありません。

以前ご紹介した唯識でも、「人は心を通して世界を見ている」とお話ししました。

『イクストランへの旅』も、それとよく似ています。

一度、その見方を止めてみる。

決めつけを手放してみる。

すると、今まで見えなかった景色が見えてくるかもしれません。

婚活でも、「理想の相手はこういう人」という固定観念を少し緩めた途端、ご縁が動き出すことがあります。

人生でも、「自分には向いていない」と思っていたことが、新しい可能性になることがあります。

世界を変えることは難しくても、世界を見る自分の見方を少し変えることはできます。

「変わるのは世界ではありません。世界を見ている『私』なのです。」

そして、それだけで人生は驚くほど違って見えてくることがあります。

私は日々、多くの会員様とお話ししています。

成婚される方を見ていて感じるのは、「条件が劇的に変わった」というより、「ものの見方が少し柔らかくなった」という変化です。

過去に縛られなくなる。

人と比較しなくなる。

自分を必要以上に大きくも小さくも見なくなる。

そうすると、不思議と表情が変わり、人との関わり方も変わっていきます。

人生も婚活も、「正しい答え」を探すことではないのかもしれません。

むしろ、自分が握りしめている「答え」を一度手放してみること。

そこから、新しい景色が始まるのではないでしょうか。

イクストランへの旅』は、不思議な本です。

読み終えても、「なるほど、こういうことだったのか」とすべてが分かる本ではありません。

むしろ、「自分は何を当たり前だと思って生きているのだろう」と静かに問いを残してくれる本です。

私たちは、自分自身も、人生も、世界も、つい「こういうものだ」と決めつけてしまいます。

しかし、本当にそうでしょうか。

その問いを持ち続けることが、人生を豊かにし、婚活を柔らかくし、人との出会いを新鮮なものにしてくれるのだと思います。

一度、自分を降りてみる。」すると、世界は変わっていないのに、世界がまるで新しく見え始めることがあります。

その勇気が、新しい人生への第一歩になるのかもしれません。

まだまだ私自身、読み込みが不足しているかもしれません。不思議なほど味わい深い本なのです。

機会があればぜひ手に取ってみていただきたい一冊です。