パートナー代表の高橋俊哉です。3月に入り2度目の日曜日。今日は日差しは強い感じでしたが、風が冷たい一日でした。これからまた冷えていきますので、どうぞ体調に気をつけてお過ごしください。花粉症対策も怠りなくどうぞ。
さて、最近たいへん感銘を受けた本があります。それが、刀根健さん著『さとりをひらいた犬』です。物語としてはとてもやさしい構成で、主人に仕える勇敢な猟犬ジョンが、不思議な犬と出会い、その犬との対話を通して人生の本質に気づいていくという内容です。読み進めていくと、この本には「本当の自分に出会う物語」という副題がついているのですが、その意味が徐々に分かってくるのです。
読んでいくうちに、この本には心理学、仏教や東洋哲学に通じる深い智慧が流れていることに気づかされます。読み終えたあと、人生というものは、もしかすると私たちが思っているよりもずっとシンプルなのではないか、そんな感覚が心に残りました。
物語の中で不思議な犬は、まず人間の苦しみについて語ります。「人間は現実で苦しんでいるのではない。現実について考えたことに苦しんでいる。」この言葉はとても印象的でした。私たちは日常の中で、様々な出来事に出会います。しかし出来事そのものが私たちを苦しめることは、実はそれほど多くありません。本当に私たちを苦しめているのは、その出来事に対して自分の頭の中で作り出した解釈や意味づけなのです。例えば誰かに何気ない一言を言われただけでも、「嫌われたのではないか」「自分はダメなのではないか」といった思考が生まれると、その瞬間に苦しみが生まれます。出来事はただ起きただけなのに、その出来事についての考えが次々に広がり、気持ちが重くなっていく。私たちは日々、そんな思考の世界の中で生きているのかもしれません。
さらに、人間が強く握りしめている「自分」という存在についても問いかけます。「その“自分”というものはどこにあるんだい?」と。人は誰でも「自分」というものがしっかり存在していると思っています。しかしよく見つめてみると、私たちの中にあるのは、考えや感情や記憶といったものが次々に現れては消えていく流れだけです。昨日の自分と今日の自分は少し違いますし、十年前の自分とは大きく変わっています。それなのに私たちは、「自分はこういう人間だ」「自分の人生はこうだ」と決めつけてしまいます。その固定されたイメージを守ろうとすることで、人生が重くなってしまうこともあるのではないでしょうか。
本書ではさらに「今を生きる」ということの大切さが語られます。不思議な犬はとても自然にこう言います。「犬は過去を後悔しない。未来を心配もしない。ただ今を生きている。」人間はつい過去を振り返り、「あの時こうしていればよかった」と考えたり、未来を思い描き「これからどうなってしまうのだろう」と不安になったりします。しかし実際に存在している時間は、いつでも今この瞬間だけです。過去は記憶の中にあり、未来は想像の中にあります。その記憶と想像の中で私たちは悩み、不安になり、疲れてしまうことがあります。しかし犬はただその瞬間を生きています。散歩をしているときは散歩をし、食べるときは食べ、眠るときは眠る。そのシンプルな生き方こそが、実は人間にとっても自然な姿なのかもしれません。
この本を読みながら、私は人生というものについて改めて考えさせられました。私たちはいつも「もっとこうならなければ」と思いながら生きています。もっと成功しなければ、もっと評価されなければ、もっと良い人生にしなければ。しかしその思いが強くなりすぎると、今という時間を楽しむ余裕がなくなってしまいます。
本書の中にはこんな言葉もあります。「幸せは見つけるものじゃない。すでにここにあるものだ。」多くの人は、幸せは未来にあると考えます。結婚できたら幸せになれる、成功したら幸せになれる、お金が増えたら幸せになれる。しかしその考え方をしている限り、幸せはいつも未来の出来事になってしまいます。すると今という時間は、まだ幸せではない時間になってしまうのです。本当に大切なのは、今この瞬間の中にある小さな豊かさに気づくことなのかもしれません。
こうした考え方は、婚活というテーマにも深く関わっているように思います。婚活の現場では、「自分は選ばれるだろうか」「もう遅いのではないか」「もっと条件の良い人がいるのではないか」といった様々な思考が心を重くすることがあります。しかし人と人との出会いは、本来もっと自然なものです。条件や評価ばかりを気にしていると、本来の自分の魅力が見えなくなってしまうこともあります。むしろ少し肩の力を抜いて、ありのままの自分で人と向き合うことの方が、人間関係はずっと自然に動き始めるのではないでしょうか。安心して一緒にいられる相手、無理をせずに笑い合える相手。多くの人が本当に求めているのは、そうした関係なのだと思います。
この本を読み終えて感じたのは、人生はもっと軽やかに生きてもよいのではないかということでした。私たちはつい「こう生きなければならない」という思いをたくさん背負ってしまいます。しかしその多くは、自分の思考が作り出しているものかもしれません。犬はただ犬として生きています。それでも十分に存在し、十分に生きています。人間もまた、本来はもっと自由に、もっと自然に生きてよいのではないでしょうか。
人生も婚活も、結局は人と人との出会いです。そこに必要なのは完璧な条件ではなく、少しの余白と穏やかな心なのかもしれません。今という時間を大切にしながら人と向き合っていくとき、人生は思いがけない形で豊かになっていくように思います。
そんなことを静かに教えてくれる、とても心に残る一冊でした。もし機会があれば、ぜひ手に取ってみていただきたいと思います。










