パートナー代表の高橋俊哉です。5月になっており、GW真っ只中。皆さま、新緑の季節、爽やかに、颯爽として、お過ごしでしょうか。カウンセラー高橋は、普段通り静かに、穏やかに歩を進めております。さて、今日は、幕末から明治にかけて活躍した偉人、西郷隆盛の教えをまとめた『南洲翁遺訓』から、人生、婚活の指針となる考え方についてお話ししてみたいと思います。この書は、薄い本なのですが、単なる歴史的資料ではなく、時代を超えて私たちの生き方に深い示唆を与えてくれる内容に満ちています。とりわけ現代のように価値観が多様化し、何を拠り所に生きればよいのか迷いやすい時代において、その教えは非常に本質的で力強いものです。本書は実は一風変わった成立ちをしています。この語録を編んだのは薩摩人ではなく、戊辰戦争で奥羽越列藩同盟の一員として西郷と敵対した旧庄内藩の関係者なのです。開戦のきっかけとなった江戸薩摩藩邸の焼き打ちを実行した庄内藩は、敗戦後に厳しい報復を受けることを覚悟していたのですが、官軍の処置は予想に反して非常に寛大なものでした。これが西郷の指示によるものだと知った庄内藩士たちは感銘を受け、旧藩主自らが鹿児島の西郷の下に赴いて薫陶を受けるなど親しく交わるようになりました。この際に彼らが西郷から受けた教えから話をまとめ、明治22年の大日本帝国憲法発布時の大赦で西郷が名誉回復された後に書籍として刊行されたのが『南洲翁遺訓』なのです。
まずこの書を貫いている最も大きな柱は、「人としてどうあるべきか」という問いに対する真摯な姿勢です。西郷は、成功や地位、結果といった外側の評価ではなく、「天に恥じない生き方」を重視しました。ここでいう「天」とは、単なる宗教的存在ではなく、人としての良心や道理を指しています。つまり、自分の行いが正しいかどうかは、他人の評価ではなく、自らの内なる基準に照らして判断すべきだということです。
現代においては、どうしても他人の目や評価に左右されやすくなります。婚活の場面でも、「どう見られるか」「選ばれるかどうか」という視点が強くなることがあります。しかしこの教えに照らせば、本当に大切なのは「どう見られるか」ではなく、「どう在るか」です。自分の行動が誠実であるか、相手に対して正直であるか。その積み重ねが、結果として信頼につながっていくのです。
次に重要なのは、「私心を捨てる」という考え方です。西郷は、人が道を誤る原因の多くは「私欲」にあると見ていました。自分だけが得をしたい、自分だけが評価されたい、そうした思いが強くなると、判断は歪み、結果として人間関係も崩れていきます。逆に、私心を離れ、「世のため人のため」という視点で行動すると、不思議と物事はうまく運ぶようになると説いています。
これは婚活においても非常に重要な視点です。「どんな相手が自分にとって得か」という視点だけでなく、「自分は相手にとってどのような存在でいられるか」と考えることで、関係性の質は大きく変わります。与えることを意識することで、結果として自然な信頼関係が築かれていきます。
また、『南洲翁遺訓』では「敬天愛人」という言葉が象徴的に語られます。天を敬い、人を愛する。このシンプルな言葉の中に、人生の本質が凝縮されています。天を敬うとは、自然の理や道理に従うこと。人を愛するとは、他者を尊重し、思いやることです。この二つが揃って初めて、人は正しい道を歩むことができるとされています。
ここで重要なのは、「愛する」とは感情ではなく「態度」であるという点です。気分が良いときだけ優しくするのではなく、どのような状況でも相手を尊重しようとする姿勢。それが本当の意味での愛です。婚活の中でも、結果が出ないときや思うようにいかないときほど、この姿勢が問われます。条件や評価を超えて、目の前の相手に誠実に向き合えるかどうかが、長期的なご縁を左右します。
さらに西郷は、「人を相手にせず、天を相手にせよ」という言葉を残しています。これは非常に印象的な教えです。人の評価や世間の評判を基準にするのではなく、自分の良心や道理を基準に行動せよ、という意味です。人はどうしても他者の反応に一喜一憂しがちですが、それでは心が安定しません。自分の中に確かな軸を持つことが、ぶれない生き方につながります。
また、「困難の中でこそ人の真価が問われる」という視点も重要です。順調なときには誰でも前向きでいられます。しかし思うようにいかないとき、苦しい状況に置かれたときに、どのような態度を取るか。そのときの在り方こそが、その人の本質を表します。西郷は、困難を避けるのではなく、それを通して自分を磨くことの重要性を説いています。
婚活においても、すべてが順調に進むわけではありません。うまくいかない経験や、思い通りにならない出来事は必ずあります。しかしそのときに、自分を否定するのではなく、「この経験から何を学べるか」と捉えることで、その時間は大きな意味を持つものに変わります。
そしてもう一つ大切なのは、「継続する力」です。西郷の教えは決して特別なことを求めているわけではありません。むしろ、日々の小さな行いを丁寧に積み重ねることの重要性を強調しています。誠実に生きる、約束を守る、人を思いやる。こうした当たり前のことを、当たり前に続ける。その積み重ねが、やがて大きな信頼となって返ってきます。
現代はスピードや効率が重視される時代ですが、本質的な価値は一朝一夕には築かれません。婚活においても、短期間で結果を求めすぎると、どうしても無理が生じます。むしろ、自分の在り方を整えながら、一つ一つの出会いに丁寧に向き合うことが、結果として最も確実な道となります。
『南洲翁遺訓』が私たちに教えてくれるのは、「どう生きるか」という極めてシンプルでありながら、深い問いです。外側の結果や評価に振り回されるのではなく、自分の内側の基準を大切にすること。私心を離れ、他者を思いやること。困難の中でも誠実さを失わないこと。そしてそれらを日々積み重ねていくこと。
人生も婚活も、特別な技術やテクニックだけで進むものではありません。最終的に問われるのは、「どのような人として生きているか」という一点です。その在り方が整っているとき、人は自然と信頼され、ご縁にも恵まれていきます。
私どもは、出会いの機会をご提供するだけでなく、こうした生き方そのものも含めて伴走させていただきたいと考えています。もし今、迷いや不安の中にいらっしゃるとしたら、まずは外側を変えようとする前に、「自分はどのように在りたいか」と静かに問いかけてみてください。その問いに向き合うこと自体が、すでに新しい一歩となっています。
時代が変わっても、人としての本質は変わりません。だからこそ、こうした古典の教えは、今を生きる私たちにとっても大きな支えとなるのではないでしょうか。西郷隆盛は、時代時代で評価が大きく変化した人物です。スケールの大きさ、清廉さと寛容さ、ある種の危険性などが同居している多面性を持っています。福沢諭吉、内村鑑三、三島由紀夫、司馬遼太郎などが支持したり、行動の範としたり、批判したりしています。ご興味を持たれましたら是非手にとってみてはいかがでしょうか。










